• 第19話 ある団子屋の奇跡
    去年、妻と別れてから、自分が一気に老け込んだような気がする。親から引き継いだ団子屋は今夜で長い歴史に幕を下ろす。最後の日、見慣れぬ若い女の客が店にやってきた。そして入れ替わりに別れた妻も……。
  • 第18話 トランプ
    私の夫が亡くなったのは、今年の夏でした。専業主婦の私は、夫を失ってからの半年、何もせずに生きています。遺品の整理をはじめられるようになったのは、ようやく気持ちが落ち着いてきた先月のこと。夫のリュックからトランプが出てきました。その日から、私は時間つぶしにそのトランプでひとり遊びをするようになって…。
  • 第17話 さよならを言わずに
    同い年の友達が亡くなった……それを聞かされたのは、今朝のことです。亡くなった彼女は、高校時代ずっと一緒に過ごした四人グループのうちのひとりでした。本当に仲の良かった私たちは、学校を卒業してからも、大人になってからも、それぞれ結婚してからも、年に一度は必ず集まって、時間を忘れておしゃべりに夢中になる、そんな四人でした…
  • 第16話 モミジ
    亡くなった母は、家の庭に立つ一本のモミジの木を大切にしていた。それは、新婚旅行で秋の京都を訪ねたときに感動して、帰ってから庭に植えたものだった。母の葬儀を終えた夜、俺と妹はふたりで実家の処分について話し合って…。
  • 第15話 ラストステージ
    俺たちは役者をやっている。といっても万年赤字の地方の小さな劇団だ。この春、地元のホールで大きな公演を打つことが決まった。それは役者仲間の彼女にとって、最後の公演になるはずだった。還暦を過ぎた彼女は体調がいまひとつで、もう主役を張るのは体力的に限界に来ていた。ところが、初日の幕が上がるはずのその日…。
  • 第14話 写真
    趣味でやっていた写真のワークショップで知り合った人がいました。六つ年上の人でした。私は30歳になる前のほんの数ヶ月だけ、彼と付き合いました。別れた理由は、彼には奥さんと子どもがいたから。お互い、本気になる前に別れなくちゃいけない、続いてはいけない恋でした…
  • 第13話 ハイキング
    彼と出会ったのは、私が夫と離婚したばかりの頃。彼も奥さんとの離婚が成立する直前でした。私たちは知り合いがやっている居酒屋の常連で、意気投合し、少しずつお互いへの愛情を育んでいきました。そんなある日、彼さんからハイキングに誘われて…。
  • 第12話 遠い国から来たコーヒー
    大学時代の友人が亡くなったと聞かされたのは、十日前のことだ。四年間、ずっと一緒に過ごした奴だった。最後に一緒に酒を飲んだのは、四十の頃だっただろうか。あいつは脱サラして、コーヒーの仕事をはじめていた。あいつが南米に渡ったことは人づてに知っていた。そして、向こうで事故に遭ったのだ…。
  • 第11話 思い出再生旅行
    父の死から二年が過ぎた。我が家は、僕も妹も、ようやく父のいない暮らしに慣れてきた。でも、母だけはまだ悲しみから立ち直れずにいる。父と母は旅行が趣味だった。母は旅先で撮影した父との思い出の写真のアルバムを眺めては、涙をぬぐっている…。
  • 第10話 あのときの未来
    大学に進学し、東京でひとり暮らしをはじめた18歳の春、私は友達と一緒に渋谷のファッションビルで、生まれて初めて「占い」というものを体験しました。よく当たるとネットでも評判の占い師でした。ところがそこで見えた私の未来は…。
  • 第9話 愛は海に
    彼と出会ったのは、ハワイの海でのことでした。お互いバツイチ同士で、子どもはもう家を出ていたから、恋をはじめるのに障害はありませんでいた。彼は海を愛する男。付き合いはじめて五年が経ったある日、彼に…。
  • 第8話 ミシン
    子どものときの私の服は、半分くらい、母の手作りでした。手作りの洋服というとチープに聞こえるかもしれないけれど、母の作る服は素人っぽくなくて、そのへんのスーパーで安売りされているものよりも、ずっと高級に見えました。私は母の作ってくれる服が誇らしかった。私の夢は、次第にファッションの世界へと向かっていって…。
  • 第7話 ラーメン食べたい
    親父の死は突然だった。本人もまわりも身体の変化に気づかず、ある日突然の大動脈瘤破裂。還暦を過ぎてから、親父は酒も煙草もやめていたが、ひとつだけ、どうしてもやめられないものがあった。ラーメン。親父はとにかくラーメンが大好きで…。
  • 第6話 じじいのへそくり
    じじいが死んだ。九十まで生きた、俺の父親だ。じじいはとにかく、ケチな男だった。俺はそんなじじいが、ひどく人情味のない、つまらない人間に思えた。葬式が終わってから、ひとり暮らしをしていたじじいの安アパートの部屋を息子とふたりで片づけていると、じじいの預金通帳が出てきて…
  • 第5話 犬の名前
    子どものできなかった私たち夫婦は、かわりに犬を溺愛していた。可愛くて仕方なかった。しかしその子が、去年の秋、老衰で死んでしまった。ペットロスが原因で離婚した、なんて言ったら笑われてしまうかもしれない。でも、本当に私たちは離婚した…。
  • 第4話 手土産
    僕の父と母は再婚同士だった。父がバツ2で、母がバツイチ。結婚するときは再婚同士ということで、色々と厄介な問題があったらしい。でも、とにもかくにも父と母はあるとき出会い、そして結婚して、その結果、僕が生まれた。自分の親戚の顔をまったく知らずに大人になった僕は…。
  • 第3話 花
    彼女と別れたのは、もう五年も前のことになる。仕事で知り合い、二年ほど付き合った。取引先の担当者だった。互いに、家族があった。俺たちは不倫の関係だった。先にさよならを切り出したのは、彼女の方だった。その彼女が昨日…。(2020.5.5 OA)
  • 第2話 ドレス
    私がお母さんとのことで思い出すのは、昔、ふたりで暮らしていた狭い部屋だ。六畳と四畳半の二間だけの古くてぼろいアパート。お父さんはいなかった。小学生の私は毎晩ひとりで、遅くまでお母さんが帰ってくるのを待っていた。部屋の長押にはいつも、お母さんの赤いドレスがかかっていて…(2020.4.21 OA)
  • 第1話 さくら
    重い病気を抱えた人が、「来年の桜までは頑張ろう」なんて言う。よくドラマに出てくるようなありきたりの台詞だけれど、でも私の父も、入院中、病室の窓を見上げてそう呟いた。これから親孝行を…。そう思っていた矢先の病気だった。そして父は、桜のつぼみが春を待つうちに亡くなった…(2020.4.7 OA)

さよならの日に